速く走ること② 体力編

第1部では速く走ることとして、ピッチとストライドの関係を見てきました。
第2部となる今回は、どうしたらピッチとストライドを高められるのかについて、体力面との関係を見ていきます。

陸上競技では一歩ずつ弾みながら大きく跳んでいく「バウンディング」や1~5kg程度の重さのボールを投げる「メディシンボール投げ」というトレーニングがよく行われています。
それら自身にも技術的な要因が大きく関係してきますが、陸上競技選手の体力指標としてよく用いられています。

RIXPERTでも例外ではなくこの2種目を重要視しており、定期的に測定を行っています。
バウンディングでは立三段跳と立五段跳を行い、メディシンボール投げでは2kgと3kgのフロント投げ、バック投げを行っています。

まずは、それらの種目の成長率を見ていきましょう。
1年前の最高記録と比較した場合の100mの記録の伸びの平均は4.2%でした。

いずれの種目も大きな伸びを見せており、特にメディシンボール投げでは大きな伸びを見せていることが分かります。
体の成長、筋力の増加、それぞれの種目の技術の向上と、記録の伸びには多様な要因が影響していますが、計画的に継続的に練習してきたからこそです。

では、次にこれらの数値が100mの記録の伸びやピッチ・ストライドの伸びとどれくらい関係しあっているかを見ていきます。
ここでは、2つの異なる数値がどれくらい関係しあっているかを表す「相関係数」というものを見ていきます。
まずは下の表を見てみてください。


グラフの見方としては、左にある「100mの記録の伸び率」と「ストライドの伸び率」、「ピッチの伸び率」とそれぞれの種目の相関係数が示されています。
相関係数は、0~1までの範囲の数値となり、

 0.0~0.2 → 関係なし
 0.2~0.4 → 弱い相関あり
 0.4~0.7 → やや相関あり
 0.7~1.0 → かなり相関あり

とされています。
100mの記録の伸びは全ての種目の伸びと相関があるといえる結果となりました。
100mの記録の伸び」と「メディシンボール投げ3kg前」は最も相関係数が高い0.59となります。

数値で見るとイメージしづらいですが、実際の数値を見ると一目瞭然です。

100mの記録が伸びた人がメディシンボールの記録も伸びているとは言えませんが、
メディシンボールの記録が伸びた人は、概ね100mの記録も伸びていると言えます。
重いボールを遠くに投げる力と、速く走る力。
一見つながっていないように見える両者ですが、実は密接に関わっています。

このように、「バウンディングの記録とメディシンボールの記録の向上は、いずれも100mの記録の向上に影響を与えている可能性が高い。」そう言える結果となりました。

同じように、ストライドの伸びと各種目の伸びも相関があると言えます。

ここでも先ほどと同様のメディシンボール3kg前の伸びとの関係を見ていきましょう。

これも先ほどと同様、メディシンボールの記録が伸びている人は、概ねストライドも伸びているという結果が見えてきます。

バウンディングやメディシンボール投げが伸びる
 ↓
一歩ごとに大きな力を発揮できるようになる
 ↓
ストライドが伸びる
 ↓
より速く走れるようになり記録が伸びる

こんな関係が見えてくるような気がします。

一方でピッチと各種目との関係を見ていくと、ストライドとは違った傾向が見えてきます。

ピッチは、どの種目ともあまり相関がみられません。
立三段跳の数値がマイナスになっているのは、負の相関と言い、一方が増加するともう一方は低下するという関係になります。
ピッチが伸びた選手は、立三段の記録は低下する。そんな関係です。
また、これまでと同様にメディシンボール3kg前の伸びとの関係を見ていきます。

相関係数0.01が表すように、メディシンボールの記録が伸びたからといって必ずしもピッチが伸びているわけではないことが分かります。
ここで注意が必要なのが、相関がないからといって両者に関係がないわけではありません。
あくまでも全体の数値としてみると関係がないように見えるというだけで、個人個人を見れば各種目の記録の伸びがピッチの伸びにつながっている選手もいます。

ここで言えることは「ストライドの伸びに比べて、ピッチの伸びは個人差が大きい」ということにとどまります。

ということで、ここまでの内容をまとめます。

100mの記録を伸ばすためには、バウンディングやメディシンボール投げの数値を伸ばしていくことはとても重要です。
それらに必要な力が、速く走るためにも必要となります。
だからこそRIXPERTではこれらの種目の練習をよく行っています。
そして、それらは全体としてはストライドへの影響が大きく、ピッチへの影響については個人差が大きいという仮説も見えてきました。

速く走るために、ピッチとストライドを高めていく。
ストライドを伸ばしていくことについては、体力面からの一つの方向性が見えてきました。
では、ピッチを高めるためにはどうしたらいいのか。
そこについて3部作の締めとなる次のブログで考えていきたいと思います。

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